感謝

「なあ。男は結局カネや。そこさえちゃんとしとけば、ブサイクやなんやは関係あれへん。誰もが寄ってくるわ。あとは心やな。」


もちおは、接客業だ。


現場にいない時、会議ばかり行ってる時もあるが、基本は複数の現場のマネージャーだ。そう書くとイキってるみたいだが、今も月初にも関わらず、差し入れのせんべいなど食いつつスマホをいじっている、気楽な仕事でもある。


しかしもちろん、自分でお客様に接する事も多い。冒頭のセリフは、あるお客様のセリフだ。書き出してみれば下卑た内容にも見えるかもしれないが、これを優しく、染み込ませるようにお話されていた。


要は、もちおと会話していて、頑張れよ、とでも言うかのように仰っている。お客様はもう80になられるのだが、いわゆる成功者で、けっこう…言ってみれば優雅な暮らしをしておられる。その中で毎日のようにご来店いただく。


普段は雑談、好きなゴルフのお話しかされないが、たまに担当者のバックボーンを見透かしたようなお話をされる。自然と、その人が人生のどの位置にいるか、どんな状況かが見えておられるのかな、と思う。こちらは何も言わないのに。


そうやって激励してくれているのだな、とわかると、胸がいっぱいになる感覚がある。こうした誰もが言いそうなセリフでも、戦って勝ち抜いてきた人が言うと違うものだ。


もちおも、しっかり自分の力で立ちたい。家族を作って、ちゃんと支えたい。もうあの時のような情けない感覚を味わいたくない。そうするには、仕事を今以上に頑張らなくては。せんべいばっかり食ってる場合ではない。


お客様は、帰り際に「コーヒー代やるわ」と500円玉を一枚くれた。気持ちが嬉しくてコーヒーなどは買えず、家に帰って貯金箱に入れた。なんだか貯まりそうな気がする。こうしてとても豊かな気持ちで一日を終える事ができて、昨日は本当に幸せだった。


しかし冒頭のセリフを書き出してみて思ったのだが…そんな…ブサイクとかは自分では思っていないんだけど…。